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エピローグ
前日 北の大地の光と闇に包まれて 翌日

滞在地:ヘイリバー 2003/08/14 木曜日

 

エドモントンを真夜中に出発したバスは、早朝にエドモントンとヘイリバーの中間地点『ピースリバー』に到着した。グレイハウンドバスはいつも、メインのポイントで長めに休憩時間をとる。今回も1時間近くの休憩となった。

 

エドモントンからヘイリバーまで16時間。その間、ずっと一緒にバスの中にいた女の子と仲良くなった。というかこっちから声をかけたんだけど。

カナダ人も日本人も男は男なのか、この狭い空間の中にあっては、かわいい女の子のところに集まってくるらしい。そんな大きな輪が出来上がり、バスの中はいろんな話題が飛び交う場となった。

ほとんどの人はファミリーに会いに行くとか、その帰りとか。ボクのように旅をしている人はいない。

さらに言えば、オーロラを見るためだけにヘイリバーに行くというボクは、彼らにとってはある意味狂人らしい。16時間もかけてただのオーロラを見ることは、バカしかやらない。そう、ボクはある種のキチガイなんだよ、と彼らに言ってやった。

後々、このキチガイパワーが功を奏することになる。

 

さて、バスの中は話題が尽きることのない井戸端会議の場。

ボクはそろそろ皆の早口英語に疲れ、笑うポイントが違うことに疲れ、何度も聞きなおすことに疲れ、寝る。

次に気づいた時には、ヘイリバーの手前『エンタープラ』だった。ここで『イエローナイフ』へ向かう人たちが降りることになる。ヘイリバーまではあと30分。窓から景色を眺めていたらすぐに到着する。

 

今まで気がつかなかったが、既にここはノースウェストテリトリーに入っていて、カナダ極地であり、大地から空の模様から、今まで見たことのない光景が広がっていた。

空にはうっすらと視認できる空気というのか、おもしろい形状の雲が全体を覆いつくし、さらにそれらは刻々とその形を変えていく。濃い雲はない。今夜は期待できそうだ。

 

バスがヘイリバーに到着し、皆が別れていく。

ボクは予約していた宿に電話をして迎えを呼んだ。数分して宿の主人らしき人物が来てくれた。その宿に日本人が泊まることは珍しくなく、少しの日本語を織り交ぜながら、オーロラの話をした。

彼「グランパ ケン」曰く、本日8月14日(現地時間)が去年の公式オーロラ観測記録のスタート日だそうだ。ということは、今年も今日から見られる可能性が高い。またまた期待が膨らむ。

 

宿に到着して荷物を整理した後、グレートスレイブ湖畔沿いを歩く。湖は黒く、たくさんの流木が無造作に置かれている様は、ここが極地だということを改めて感じさせてくれた。

1人の小さい人間にとっては、湖と言ってもそれはまるで海と同じような大きさで、果てのない地平線のみ確認することができる。ボクは湖のその先にあるだろう北の大地を想像しながら、夕日が沈んでいくのを眺めていた・・・・・。

 

宿に戻って夕飯を作り、食べ、部屋でゆっくりしていたらいつの間にか寝ていたらしい。

気がついた時には、時計は既に12時をまわっていた。ケン曰く、オーロラは夕日が沈んでから2時間ほど経ってからが見ごろらしい。急いで外に出なければと、ジャケットを取り出して防寒対策していると、誰かがドアをノックする。

「オーロラが出てるぞ、早く来い!」

興奮は高まる。すぐに靴を履いて外へ出る。そこに見たものは・・・・・。

 

光のカーテンとはよく言ったもので、それはカーテンとも階段とも表現できる、神秘的な輝きを帯びたものだった。一時激しく光を放ったその帯は、その後一旦分散し霧状のもやになり、さらに待っているとそのもやがまた一塊となって緑や白に輝く。地平線から地平線までを、まるで地球を取り巻く輪のように。

 

北の夜空が織り成すレーザーショーを、ボクは宿の前の芝生に横になりながら無言で眺めていた。

瞬きすらせずに光を凝視し続けるボクは、その光に魔法でもかけられたかのようになっていた。

ただひとつ残念なことは、ボクの持っているインスタントカメラではこの光のカーテンを撮影することができなかったということだ。高性能のカメラを持って、またここに戻ってこようと思う。

 

【編集後記】

言葉はいりません。ぜひ一度、オーロラ鑑賞に出かけることをオススメします。人生で一度は見るべきものだと思うから。

 

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